極真会館の中で「チャンピオン製造工場」と呼ばれている城西支部。
城西支部入賞者
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近年では全盛期ほどの優勝者が出ていなかったが、
今回の西関東地区交流試合では、
一般新人戦、女子部、高校生の部、全日本ウェイト制選抜で入賞者6名
そのうち5名が優勝という結果で、まさに「チャンピオン製造工場」の名に
恥じない結果となった。
一般新人戦では早稲田大学同好会から軽量級に井上 隆博、
中量級に幅下・祐大が出場し、両者ともが優勝した。
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井上は空手歴が浅いものの先輩である森善十朗に「異常な練習量だ」と言わせるほどの稽古量で選手稽古でも頭角を現している。
今回の試合でも、荒いながらも技の威力は群を抜いており、延長の連続でも練習で培ったスタミナは切れることが無く勝ち上がっていった。
相手の返り血で道着が血まみれになりながらも、稽古量に裏付けされた不屈の闘志で優勝を決めた。
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幅下は選手稽古に参加していた当初は、先輩達に数え切れない程に倒されていた。
指導者が「もう来なくなるのでは・・」と心配するほどだったが、決して休まず手を抜かず、
一緒に練習する格上の先輩と同メニューを黙々とこなした。
その甲斐あってか前出の森が「幅下とスタミナ練習をしても勝てない」と言わしめるほどのスタミナを身につけた。
試合ではお世辞にも上手いとは言えないが、試合開始から試合終了まで猛ラッシュ。
準決勝以降の試合時間が3分になってもお構いなし。上級者でも困難な3分間猛ラッシュで勝ち上がり
決勝は1本勝ちを決め、スタミナだけでないことも証明して見せた。
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早稲田の両者に共通しているのは、初心者だということ。そして、その立場を気にせず選手稽古に休まず参加した勇気と努力。
毎回の稽古で黒帯と組手をする恐怖に打ち克った時点で、既に試合に勝っていたのかもしれない。
全日本ウェイト制選抜には、軽量級に西村直也、中量級、長谷川泰史、重量級は小林大起が出場した。
軽量級に出場した西村の年齢は43歳。並みの選手なら引退をしていてもおかしくない年齢ながら、今大会ではナンバーワンの運動量を誇り優勝を決めた。
普段の稽古で、最も気合を入れ後輩を引っ張る西村は試合でも決して気持ちが折れることなく、何度も延長戦を戦いながらも最後は必ず相手を打ちのめした。
今回の勝利に繋がったのは突き技。
その驚異の肉体から繰り出される強打により、どこに当たろうが確実にダメージを与えていった。
技術では彼を上回る選手はいたが、勝利への執着心で上回る選手はいなかった。
人生の全てを空手に賭けている彼は、長い間勝利する事を待っていた。
今まで待った時間を考えれば、日本の頂点に立つまで執着心が消えることは無いだろう。
優勝後にもすぐに次の試合に向け反省を始めた彼に、もう待つ気はない。
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次の試合に備え回復に努める長谷川
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中量級に出場した長谷川は、緒戦こそ力みがあったものの徐々に調子を上げていき
2回戦では1本勝ちをマークして決勝まで駒を進めた。
技の威力、正確さともに高い潜在能力を誇るも課題は精神面。
クールに試合運びをする反面、勢いのある相手に遅れを取ってしまうことが度々あった。
自分自身でも自覚している長谷川は練習時から自らを追い込み、常に鬼の形相で心身を鍛え上げた。
その甲斐あってか今大会でも、勢いで来る相手に慌てることなく次々と正確無比な技を叩き込んでいき決勝まで順調に進んだが、残念なことに序盤は好調だったものの、顔面殴打による試合中断によって、若干勢いが弱まった感じがした。
最後に課題が浮き彫りになる形で2位に甘んじてしまったが、選抜で優勝しなくても全日本王者になった例は数え切れないほどある。
高校教師である長谷川は明確になった課題を復習し、6月の全日本では見事な桜の花を咲かすに違いない。 |
重量級に出場した小林は若干16歳。他流派の経験があるものの極真に入って初の試合ということもあり、緊張はピークに達していた。
緒戦は開始直後に上段回し蹴りで見事な1本勝ちを収め、会場を驚かせた。
だが2回戦では試合を優位に運ぶも、相手が粘りに粘り再延長で敗退する結果となった。
2試合を見る限り、出場選手の中でも抜群の技のキレを見せたが、再延長でスタミナ不足を露呈してしまった。
本人からの口からは反省の弁しか出なかったが、彼の父親からは体調が十分ではなかったとの話もあったので真意の程はわからない。だが、試合に向けてのコンディション作りも試合の一部だと本人が認識できたとすれば、今回払った授業料は決して高いものではないだろう。
本大会では、新宿道場の選手稽古に参加している5名が出場し、4名が決勝へ進出した。
この結果はベテランと若手がお互いに盛り上げながら、西村式腹筋などの質の高い練習を出来たことが要因の一つであることは間違いない。
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一撃を飲んで闘志を燃やす小林選 |
本格的に再稼動し始めたチャンピオン製造工場が、今後より多くのチャンピオンを製造し、出荷できることを期待したい。
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当日は朝から生憎の雨模様だったのだが、その雨空を吹き飛ばすかの様な熱戦を各選手が展開した。
壮年初級軽量級に出場した嶋田7級は、初戦の乱打戦を制し二回戦へ。ここで身長、体重ともかなり差のある選手に二回顔面殴打をもらってしまい、かなりのダメージを残したまま不運な判定負け。栗原6級は壮年初級重量級の参加者の中で最年長だったが、年齢は関係ないとばかりに真向勝負、全く引くことなく打ち合ったが、最後は屈する形となった。同カテゴリー参加の麻生8級の初戦は、体格を生かした突きと膝蹴りで全く引かず0−0のまま延長へ。ここで少し手数が減って判定負けとなった。
黒田2級は壮年上級軽量級に出場。この大会に向けて密かに行ってきたパワートレーニングの成果を見せ、本戦、旗二本まで追い込むも延長へ。ここで息を吹き返した相手の手数が勝り、逆転の判定負け。
高校初級重量級に出場の吉高8級。去年は初戦敗退だっただけにその気持ちには並々ならぬものがあったようだ。一回戦は不戦勝で二回戦からの試合となったが、試合前の緊張がまるで“うそ”だったかの様な凄まじい爆発力を見せ相手を圧倒、判定勝ち。決勝も186cm、95kgの体を最大限に生かしきって勝利。見事に高校生活最後の試合を優勝で決めた。
長浜初段は女子上級重量級に出場。一回戦はシード。二回戦は強烈な左下突きを決めて一本勝ち。決勝戦は体重で10kg以上重い相手と打ち合い、延長にもつれこんだが、やはりここでも左下突きをコツコツと打ち続け、しっかりと技を効かせての優勝を飾った。
長浜初段は、参加カテゴリー中最軽量ながらしっかりとダメージを与える組手をしていることが、一緒に参加した選手、応援に駆けつけた道場生の目にも焼きついたようだ。今大会の長浜初段は特に突きが強くなった様に見受けられたが、これはコツコツと続けた稽古とパワートレーニングの成果であろう。強くなるための近道はない。「継続は力なり」この言葉を胸に刻み、今大会に参加された選手の奮起に期待したい。
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