決勝戦に勝利した森は、先輩の山辺光英を見つけると
堪えきれずに泣き崩れた。 |
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平成21年8月23日。 第4回世界ウェイト制大会。 |
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中量級で森善十朗が世界王者に上り詰めた。
24歳という若さで世界王者になった森だが、
その道は決して平坦では無かった。 |
2004年、高校全国チャンピオンだった森は、さらなるレベルアップを求めて石川支部から同郷の先輩である山辺が所属する東京城西支部に移籍した。
山辺とマン・ツー・マンで稽古を重ねた森はメキメキと頭角を現し、2006年には全日本ウェイト制大会で優勝を飾る。
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この頃から森にとって世界大会が夢から現実味を持った目標に変わった。 |
そして2007年。
第9回全世界大会の代表権を賭けた全日本ウェイト制大会。
ディフェンディングチャンピオンの森は圧倒的強さで準決勝に駒を進めた。 |
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これに勝てば世界代表を獲得できる試合で森は顔面殴打による
痛恨の反則負けを喫してしまう。 |
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掴みかけていた世界への切符を逃した森は、失意に打ちひしがれた。
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世界大会を客席から見ることしか出来なかった森は、悔しさをバネに世界各国の試合に出場、心身ともにギリギリまで追い込んだ。
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そして数多の死闘を潜り抜け、無差別の全日本大会でベスト8となり、今回の世界ウェイト制大会の出場権を手に入れた。 |
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だが、追い求めた世界大会を目前に稽古の歯止めが効かなくなった森はオーバーワークを起こしてしまい、一番追い込まなければならない時期にほとんど練習らしい練習をすることができなかった。 |
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肉体的、精神的に追い詰められた森だったが、長年一緒に稽古を積んできた山辺をはじめ多くの仲間が叱咤激励してくれたことで「絶対に優勝する。」と気持ちを固めることができた。
試合当日集中力が最高潮に達した森は、大きな声援を受けながら勝ち上がる。
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1回戦、ロシアのフセイン・エリハノフに判定勝ち。
準決勝の相手は前大会王者のアンドリュース・ナカハラ。 |
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1回戦を圧倒的な強さで勝利したナカハラ選手に森は真っ向から打ち合い、試割り判定での勝利を飾る。
この試合のダメージにより、ナカハラ選手は3位決定戦を棄権。
森の攻撃力の強さを印象付けた。そして迎えた決勝戦。
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相手は木立裕之
何度も全日本ウェイト制の王者となり、世界ウェイト制も過去全てに出場、入賞に輝いている歴戦の勇だ。
偶然にも、森が中学生の時に山辺を訪ねて上京した際、山辺の紹介で木立選手と話をしたことがあった。
その時は雲の上の存在である木立選手を前に舞い上がってしまい、10年後に世界大会の決勝戦で戦うことになろうとは想像もしていなかった。
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そんな気持ちがあったのか、本戦は木立選手の勢いに飲み込まれそうになる。
判定2−0。
延長戦に突入。
ここで森は
「練習した全てを出し切る!」
と猛然とラッシュをかける。今大会、最も溌剌としたその動きは、何年も山辺のもとで繰り返した動きだった。 |
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延長戦終了。
文句ない判定勝ちを収め、森善十朗が東京城西支部初の世界王者になった。 |
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見事、12年ぶりに世界ウェイト大会中量級に日本の王座をもたらした森だが大会前から試合まで薄氷を踏むかのようにギリギリでの勝利だった。
森が苦難を乗り越えて優勝した影には、山辺をはじめとする多くの仲間のサポートや応援があった。 |
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試合後に流した涙には、嬉しさ以上に仲間たちへの感謝の気持ちが溢れたのだろう。
5年前、石川から独り上京した森は、東京で多くの仲間を手に入れた。
それは森にとっては世界王者の称号以上の宝物なのかもしれない。 |
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